【報告】令和6年度:外務省NGOスタディ・プログラム
地球の友と歩む会/LIFEでは、外務省が実施するNGOスタディ・プログラムを活用して、職員へ研修を実施しました。実際にプログラムを受けた職員:佐藤より報告させて頂きます。
※詳細は外務省HPで公開されている報告書をお読みください
※こちらでは報告書の補足や書ききれなっかったことについて記載します
※職員:佐藤は2025年3月末に職員を退職し以降は正会員としてボランティア参加中)
1.NGOスタディ・プログラムとは?
日本の国際協力NGOの人材育成を通した組織強化を目的とし、日本の国際協力NGOに所属する中堅職員を対象として国内外で研修を受けるための経費を支給するプログラムです。
詳細はこちら(外務省HP)⇒https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/shien/study_p.html
【国内研修受講型】を選択
LIFEでは次の日本の法人が主催する講座を受講する「国内研修受講型」にてプログラムを進めました。
【初級】メタファシリテーション1~3
- 主催:認定NPO法人ムラのミライ
- 日程:オンライン型【合計6日間】
メタファシリテーションとは?
聞き手(ファシリテーター)が話を聞く相手(当事者)との信頼関係を構築しながら、当事者自身が問題や解決方法に気づくよう会話を組み立てていく手法です。(ムラのミライHPより)
MSC手法【入門・中級Ⅰ~Ⅱ】
- 主催:一般社団法人参加型評価センター
- 日程:オンライン型【合計3日間】
MSC手法とは?
MSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)は、欧米のNGOが使っている参加型・質的評価手法です。
・質的な変化・想定外の変化を捉える
・現場の人が関われる参加型の手法
・組織学習に効果的
以上の特徴があります。(参加型評価センターHPより)
2.研修を受講して得た学び
地球の友と歩む会/LIFEのような市民参加型を目指すNGOは元より、国際協力に携わりたいすべての方が専門家を問わず、支援現場や運営に参加する際の最低限の知識おして共有すべき知識であると学びました。
また日本でのプログラム設計においても大変役立つと考えられます。国際理解教育を進めたい方にもおすすめしたいです。
メタファシリテーションの基本
- 事実のみを質問し、感情・考え・事実を区別する
・感情や考えには主観が入り込む
・「いつも」「●●人は」などの一般化させる言葉は避ける - 自己肯定感に配慮にした相手が答えやすい質問をする
・「なぜ?どうして?」を封印する
・事実質問の仕方によっては相手が委縮してしまう可能性がある - 提案やアドバイスはせず相手が気付くまで待つ
・提案やアドバイスには主観が入り込んでいる
・相手が自主的に気づかないと行動変容はおきない
- 受講後の学び:例えば・・・
- 感情・考え・事実のうち何を聞きたいのかを自覚できるようになる
MSC手法の基本
- データ収集:現場からインタビューなどで基本設問*でエピソードを集める
・基本設問でエピソードを集める
・事実確認は重要 - データ分析:現場の話し合いで「最も重大な変化」のエピソードを一つ選ぶ
・評価によっては複数選んでもOK
・必ず現場にいる人が選ぶ - フィードバック:どのエピソードがなぜ選ばれたかという選択結果を現場に還元する
・MSC手法で最も重要で大事な要素
・還元することで組織学習や改善になる
- 受講後の学び:例えば・・・
- 現場のエピソードには人の感情や考えを動かす力があること発見。
支援現場で集めたエピソードを読んでいますと、例えばスンバ島の栄養改善にて小学校の校長先生より、
子どもたちが人生初めて色鉛筆を使って絵を描いたけれど、絵を描く能力があったことにとても驚いた。
という趣旨の発言をしていました。
正直、現場を知らない国内の職員である私からすると「色鉛筆を使って絵を描くなんてだれでもできるでしょ」と思ってしまいました。校長先生が感じたインパクトを感じ取れずにいました。
ところが話を聞いていくと、校長先生は「子どもたちの将来の職業は農家しかないと思い込んでいたけれど、デザイナーになったりと他の職業を選択する可能性があるんだ」ということにLIFEの支援を通して気づいたそうです。
MSC手法でいうところの「なぜそのエピソードを選んだのか」という掘り下げがなければ、私はLIFEの支援のインパクトに気づかなかったかもしれません。またエピソード選択に、日本の職員である私が介入してしまった場合、校長先生のエピソードは選択しなかった可能性もあります。
3.LIFEに生かすための実践方法
①手法の確認
メタファシリテーション、MSC研修ともに受講した職員が過去にいました。しかし最後に受講したのが10年前だったり、退職したり、本での知識のみと、学びの継承に問題点を抱えていました。団体内部においても手法の学びを視覚的にも確認しやすいよう1枚にまとめて事務所に掲示致しました。
またムラのミライさんからは、国際協力に特化した練習テキストがなんと無料で公開しております。こちらの問題集と合わせて継承できればと考えています。
MSC手法についても参加型評価センターさんより無料で手引きを公開しています。このテキストともに手法の理解に努められればと思います。
②手法の実践
研修をすべて完了していない段階ではありましたが、ボランティア会やインターンとのコミュニケーションや振り返りなどでメタファシリテーションとMSC手法を活用してみました。そうしましたら意外なことが分かりました。

数ある団体からなぜLIFEを選びましたか?
実際にはメタファシリテーションを用いて事実質問に置き換えて質問をしたところ、意外な答えが返ってきました。

Aさん
団体名が可愛いなと思って気になりました!

Bさん
団体名が、地球規模で物事を考えていること、友という対等な目線で歩もうという姿勢が良いなと感じて興味が湧きました。
いままでは「名前がいかにも市民団体っぽくてかっこわるい」「世界中の山を登る団体っぽい印象がある」「略称のLIFEの方が良いのでは」という否定的な意見ばかり聞いていたのでとても驚きました。
しかもこの意見は、1人だけではなく、複数の方が証言しました。
メタファシリテーションによって、肯定的な意見もあるんだという気づきを得ることができました。
③手法を用いた改善
2024年度では、LIFEで発行している年次報告書を読んで感想を送る、というリモートボランティアを東京ボランティア市民活動センターさんと行いまして、26名の方より回答を頂きました。

参加者
現地の方のメッセージを読んで、支援の必要性がとてもよく分かりました。
といったように、エピソードを読んで支援の理解が進んだ方が多く見受けられました。
一方で、

参加者
エピソードが多くて理解に時間がかかり読むのに大変だった
といった意見も見られました。
例えばMSC手法で選ばれた現地のエピソードを1つ掲載する方が、理解がより進められるのでは、と考えています。またMSC研修においても「エピソード選択は必ずしも1つではなく複数選んでも良いが、読むのに時間がかかるのでおすすめしない」とアドバイスを頂きました。
支援現場において一番に選ばれたエピソードが持つ力を信じて、今後もボランティアの立場から改善できればと考えております。
4.謝辞/研修・助成先情報
- メタファシリテーション講座
- MSC研修
どちらの研修も演習が豊富であったので、座学と実践の両方を体験できます。とくにメタファシリテーションについては事前課題が豊富にあったので、研修期間中は自宅や職場などで練習を行い、手法の習得に努められたと思います。この記事を読んだ方、報告書を読んだ方で、興味が出た方は受講をお勧めいたします。
学びの場を提供して下さったムラのミライ様、参加型評価センター様、そして本プログラムの助成を採択くださいました外務省および事務局担当したJANIC様に、心より感謝を申し上げます。