スンバ島栄養改善事業完了報告
インドネシアのスンバ島で実施した栄養改善事業の完了報告です。
- 概要
- 助成機関:味の素ファンデーション
事業名:スンバ島農村部に暮らす村人と子どもたちのための栄養不足改善プロジェクト
事業地:インドネシア東スンバ県ライパンダック村
対象者:ライパンダック小学校の児童20名とその保護者
現地カウンターパート:ワインガプラジオMAXコミュニティ財団
事業期間:2021年4月ー2024年3月
※味の素ファンデーション様の支援は2020年4月開始でしたが、新型コロナの影響で事業開始を一年延期したため実際に事業が始まったのは2021年4月になります。
1.事業開始に至るまで
- スンバ島の位置
- スンバ島農村部の子どもたちの問題
- なぜ栄養改善が必要なのか東スンバ県の農村部に暮らす子どもたちが抱えている問題についてご説明します。
•東スンバ県の農村の小学生の7割が片道5㎞以上歩いて登校している。
•東スンバ県の農村の小学生の2割が誰かしら毎日欠席している。
※朝食を食べていないため空腹だったり、登校前の水汲みの疲れが主な原因です。
•学校へ来れても空腹から授業に集中できず授業の内容を理解できない。
•小学校に入学して初めて文字に触れる子が多く、読み書きができず授業についていけない。
※小4でも読み書きがあやふやな子がいます。
•食事を十分にとれない。
※農村部に暮らす人たちは現金収入がなく朝食を用意することができません。また、お昼ご飯や夕飯は白米やトウモロコシだけのことが多く、おかずはあまり食べません。おかずは村で結婚式やお葬式があった時に肉や魚を食べる程度です。
農村部の一般的な食事
そこで私たちLIFEは次のような理想を掲げ、味の素ファンデーション様からご支援をいただき栄養改善に着手しました。
•お腹がすいて登校できない子どもたちの空腹を満たす。
•子どもたちが毎日元気に学校へ行けるようになる。
•授業をしっかり聞いて学力を上げる。
•親の収入を増やして貧困から抜け出す。
- 2020年のスンバ島のコロナの影響
- 事業開始を予定していた2020年4月は世界的にコロナが猛威を振るい、事業を延期せざるを得ませんでした。はじめに当時のスンバ島のコロナによる影響に触れておきます。
病院で感染防止対策ができなかった
マスクなし
フェイスシールドなし
医療用エプロンなし
PCR検査がなかなかできなかった
パンデミックから半年後の2020年9月16日にスンバ島の住民も検査を受けることができるようになりましたが、BNPB(地方防災局)のヘリコプターで検体をティモール島クパンまで運ばなくてはなりませんでした。しかも一度に6人分までしか運べませんでした。
検体を運ぶヘリコプター
パンデミックから一年以上たった2021年5月31日、東スンバ県の県庁所在地ワインガプでやっとPCR検査ができるようになりました。
ワインガプではコロナはとても猛威を振るいましたが、農村部には感染者がいないとされています。
それは、もともと公共交通機関がなく隔離状態だったのもありますし、そもそも村では検査ができないという理由もありました。
学校の休校が長引いた
事業地がある東スンバ県では、2020年3月から2021年9月まで小中高ともに一年半もの長い期間休校になりました。その間、教員が各家庭を訪問して授業を行っていました。
集落ごとに児童を集めて授業をする教員
しかし、村はとても広く、道がないとバイクで入れないため教員は徒歩で行かざるを得ませんでした。そのため、教員は週に一回しか家庭訪問をすることができませんでした。子どもたちは一年半もの間学校に行っていませんでしたが、特別措置で全員進級しました。
- 2021年4月、制限があるなか栄養改善事業を開始
- まだこのころはコロナによる影響を大いに受けていたので、次のように事業内容を変更して開始しました。
・対象児童が高学年全員の約50名から小学校近隣在住の20名(学年問わず)に縮小
※開始時期の2021年4月がまだ休校中だったため子どもたちは自宅にいました。
・町に事務所のあるラジオMAXスタッフも感染防止対策を徹底したうえで、短時間で訪問
・当会スタッフ・日本人小児科医、現地に渡航できず
※事業2年目(2022年度)にやっと渡航することができました。
- 事業目標と指標
- 助成機関である味の素ファンデーション様了承の下、次のように定めました。
事業目標
ライパンダック小学校の児童たちは、医師の診察の下栄養のある食事を摂取することにより、通学する体力や授業への集中力が改善され学習の質が向上する。
指標
1. 児童の授業への出席率が80%から90%に増加している。
2. 決められた時間までに遅刻しないで登校できる児童が50%から80%になる。
3. 有機農業と栄養に関する質問で保護者および児童が70%の正解率を得る。
4. ローレル指数が正常範囲である。
この目標を達成するために私たちLIFEは、7つの活動を行いました。
次からはこれらの活動について一つずつご説明いたします。
2.7つの活動内容について
- 活動➀ 村人が有機農業ができる
- 村の人たちが野菜を栽培し食べることにより栄養を摂ったり、販売して現金収入の増加を目指しました。
ー事業前の村人の主な収入源ー
海で釣った魚や村に自生する木の実を販売する程度でほぼ収入はない状態
実施内容
•畑の整備
•有機農業研修(有機肥料や有機防虫剤の作り方、種まき、育苗、収穫など)
•インタビューによる理解度の確認
この活動に参加したのは村の大人だけでではありません。ライパンダック小学校の子どもたちも将来野菜作り農家として生計を立てることを目指し参加しました。事業が始まった当初は子どもたちは休校中だったので、学校代わりに楽しんで畑に来ていました。
休校中に学校代わりに農業研修に参加する児童
得られた成果
•対象者全員が野菜を栽培できるようになりました。(トマト、玉ねぎ、チンゲン菜、キュウリ、キャベツ、インゲン等)
•質疑応答により対象者は90%の内容を理解していることを確認しました。
- 活動② 村人が栄養について理解する
- 村の人たちにとって食事とはお腹がすいたら空腹を満たすために食べるものでした。現金収入の機会がないことから、白米やトウモロコシといった主食しか食べることができません。
ライパンダック村に栄養士がいないことから、当事業では日本の管理栄養士にアドバイスを頂きました。
管理栄養士が事業対象者におこなった調査によるとほとんどの家庭でタンパク質(肉、魚、卵、大豆など)を食べていないことがわかったので、村の人たちに栄養バランスの取れた食事をすることが大事だと話したうえで、特に子どもの成長に必要なタンパク質を取るようアドバイスしました。
実施内容
•月に一度栄養バランスの取れた昼食を小学校で提供しました。
•保護者向け・児童向けに栄養の話をしました。
•保護者向けに料理教室を開きました。
•クイズ、パズル、インタビューにて理解度を確認しました。
•小学校にバイオガス発生装置を設置しました。
•小学校に調理場を建設しました。
建設した調理場で昼食の準備をする教員たち
月に一度の栄養バランスの取れた昼食を食べる児童たち
得られた成果
•児童と母親の全員が栄養(タンパク質・炭水化物など)を理解しました。
•月に一度小学校での昼食提供を継続しました。
•小学校の教職員全員がバランスの取れた献立を調理できるようになりました。
•各家庭でも献立改善の努力をしました。
- 活動③ 子どもたちの健康状態を把握する
- 当事業を実施することが決まった2019年当時スンバ島には小児科のお医者さんがいませんでした。(現在は町には何名か小児科のお医者さん方がいらっしゃいます。)そのため日本の小児科のお医者さんに子どもたちの健康状態に関するアドバイスをお願いしました。
実施内容 ※小児科医が行ったこと
•3ヶ月に一回程度の身体測定のデータから子どもたちの成長過程を把握しました。
•現地に渡航して子どもたちの健康状態を確認しました。
•日々の生活のアンケート調査を行いました。
※なぜ子どもたちがこんなに痩せているのか日常の活動を保護者に聞き取りしました。
•ブリストルスケールで子どもたちの便の状態を把握しました。
※日々の生活アンケートや一回目の渡航で子どもたちの胃腸に問題がありそうだと分かったので、2回目の渡航の際に子どもたちにブリストルスケールから自分の便の形状を選んでもらいました。
•教員に正しい身長の計測方法を指導しました。
※スンバ島の小学校では児童の身体測定をする習慣がないので教員は身長の測り方を知りませんでした。
児童の健康状態を見る日本から渡航した小児科医
得られた成果
•ローレル指数からほとんどの子が”やせ”に該当していることが判明しました。
•ブリストルスケールから子どもたちの多くが水様便であることが判明しました。
•多くの子どもがひどい虫歯であることが判明しました。
•教員が児童の身長を計測できるようになりました。
- 活動④ 収穫した野菜を販売する
- 栄養改善をするには食材を購入する必要があります。村人たちが収穫した野菜を個人的に売ってもなかなか買ってくれる人は見つからず収入は増えません。そこで、私たちは村の人たちが収穫した野菜を販売することができるような活動も行いました。
実施内容
•村の中に青果販売所を建てました。
•青果販売所で収穫した野菜やパパイヤ、魚を販売できるようにしました。
•小学校の校庭にも畑を作り、小学校でも販売することにより必要なものを買えるようにしました。
※小学校では教員と子どもたちが野菜作りをし、収穫した野菜は各自持ち帰って自宅で食べたり学校で売って畑のフェンスを作る費用に充てたりしました。
ここに来れば野菜を買うことができます。養殖の魚やパパイヤも売っています。
得られた成果
•各家庭の収穫物を集めて青果販売所で販売しました。
•各家庭での現金収入が月に2,000円~4,000円になりました。
•小学校では農園のチンゲン菜からの収入で肉などを購入し昼食時に提供しました。
- 活動⑤ 果樹の植林
- 色々な栄養を取るためにパパイヤの植林をしました。
2023年9月に味の素ファンデーション様がライパンダック村を訪問した際にこのパパイヤを召し上がりました。「こんなに美味しいパパイヤをこれまで食べたことがない!」と皆さんとても喜んでいらっしゃいました。
実施内容
•小学校の校庭にパパイヤを10本植えました。
•村の約200世帯にパパイヤの苗木を10本ずつ配りました。
•小学校や各家庭で苗木の世話をしました。
村に訪問した際に村の皆さんと食べたパパイヤ
得られた成果
•小学校では児童と教職員が世話をし、収穫しています。
•村人およそ200世帯に配ったパパイヤの苗木は半数以上が成木になり収穫しています。
•朝食を用意できない家庭には、このパパイヤを食べるようアドバイスをしました。
- 活動⑥ 魚の養殖
- 調査から村人たちにタンパク質が足りていないことがわかっていたので、魚の養殖をしました。村の役員会の食事や小学校の昼食時にもこの魚を食べることができ喜ばれています。
実施内容
•村にいけすを作りました。
•淡水魚の稚魚を購入し飼育しました。
•村人たちが餌の作り方を学びました。
※魚のえさは村人たちが手作りしていますが、食べ終わったパパイヤの皮も餌になります。
•村のみんなが魚を食べることができるよういけすをむらのあちこちに増やしました。
魚の飼育をする村人
得られた成果
•いけすが12ヶ所になり、それぞれのいけすで村人たちが魚を飼育しています。
•村の人たちが自ら餌を作ることができるようになりました。
•小学校の昼食時に提供しました。
•村の役員会でもこの魚を揚げて役員たちが食べました。
- 活動⑦ 栄養改善プログラムの普及
- 当事業の対象者はライパンダック村の20世帯ですが、他の村人もこの活動に興味を持って始められるようにしました。その結果、畑の面積が広まりいけすの数も増えました。
また、他の村の人たちも栄養改善を知ることができるようイベントを行ったりガイドブックを作りました。
実施内容
•児童による発表会を開催
村全体にこの活動が広まるように、また他の村の人たちも知ることができるように年に一回児童による発表会を行いました。
<発表会の内容>
1年目:絵画コンクール
コロナの影響でこの年は集会が開けなかったため絵画になりました。
2年目:詩の朗読
事業に参加できる喜びや神様への感謝を詩にして発表しました。
3年目:事業で学んだことの発表
有機肥料の作り方や種まきの方法など各自トピックを決めて発表しました。
絵画コンクールで絵を描く子どもたち
1位入賞フィアちゃん(小1)の絵
葉物野菜、まだ色づいてないトマト、畑の柵、川などを描きました
観客の前で発表する児童
小学校によると当事業に参加し卒業した子どもたちが中学校で良い成績を収めているそうです。当事業で栄養バランスの取れた食事をしたこと以外にも発表会などに参加し子どもたちが暗記をしたり自分なりに色々考えたことが良い成績として表れてたのではないかと先生方は分析しています。
•ガイドブックとDVDの製作
当事業で行った活動を網羅するガイドブックを500冊とDVDを50枚作りました。有機肥料の材料や作り方も記載したので、農業研修に参加していなくてもこれを見ればできるようになっています。
•他村からの訪問の受け入れ
この活動を他の村の人たちにも知ってもらうため、他村からの訪問を受け入れました。野菜畑の視察や栄養バランスの取れた食事の試食、栄養紙芝居の披露などを行いました。
得られた成果
•年に一回児童による発表会を開催したくさんの人たちが視聴しました。
•ガイドブックとDVDを製作し他地域への普及に役立てています。
•他村から村長、校長、県から役人が村を訪問し事業を視察したことによりたくさんの人たちが当事業を知りました。
3.活動を終えて
- 事業中に生じた問題で改善したこと
- 事業実施中は思い通りにいかなかったことや予想していなかった大変なことがありました。改善できたことについてお話をさせていただきます。
調理場の衛生問題
月に一度、小学校の先生方が栄養バランスの取れた食事を作って児童が食べるという活動を実施しました。その際、私たちが気になったのは先生方が地べたで食材を切ったりよそっていたことです。洗った食器も地面に置いていました。また、調理場の中に犬やニワトリなどの動物が出たり入ったりしていました。
調理場のこのような様子はスンバ島では普通の光景です。しかし、子どもたちの便が緩いというデータも得ていることから調理場の衛生面を改善することにしました。
改善前
地べたで調理、犬が出入りしていた。
改善後
テーブルで調理する教員
新たに設けた食器棚 動物が入らないよう入口に設置した柵
身体測定のデータ
日本から小児科のお医者さんが現地へ渡航して身体測定のやり方を指導する前は小数点以下は記録されていませんでした。お医者さんの指導後は、小数点以下まで記録するようになりました。
指導前
指導後
身長の測り方
スンバ島の小学校では児童の身体測定をする習慣がなく、先生方は身長の測り方を知りませんでした。コロナの影響でお医者さんが現地へ渡航できなかったので、ポスターで説明したり、実際に日本の小学生の身長を測る様子を録画して見せたりしました。しかし、なかなか伝わらず、お医者さんが渡航してやっと指導することができました。
身長の測り方を記載したポスター
栄養の概念を伝えること
コロナで日本から小児科のお医者さんや管理栄養士が渡航できなかったので、児童や保護者への栄養指導をお願いしましたが、ちゃんと理解しているのかどうかわからない状態でした。
渡航ができるようになり、日本から教材を持っていき児童や保護者に説明をしました。栄養を色分けで説明したり、ストーリーがあってとても分かりやすかったようです。クイズではほとんど満点でした。
- 事業中にわかった課題
- この事業を行っている過程で見つかった課題もありました。
虫歯
日本から小児科医が渡航し子どもたちの健康状態を見たことにより、村の子どもたちがひどい虫歯であることが判明しました。村の人たちは現金を持たないので、ジュースや甘いお菓子は買えないだろうと考えていました。それなら、どうしてこんなにひどい虫歯になるのか。村の人たちに聞き取りをしました。
聞き取りの結果、現金をほとんど持っていないにも関わらずけっこう購入していることがわかりました。そして、甘いものを飲食しているのに歯磨きの習慣があまりありません。
虫歯がひどいと歯が痛くなり、せっかく栄養改善をしても食べることができなくなってしまいます。今後は口をゆすぐのに必要な安全な水を各家庭で使えるようにしていく必要があります。
便の状態
ブリストルスケールから水様便の子が多いことがわかりました。県のデータでもお腹を壊す村人が多いことがわかっています。他の村でも住民の胃腸の調子が悪いことを把握しているようです。また、村の人たちに聞いたアンケートによると住民のほとんどが地べたで調理していることがわかりました。手洗いには水を使うので、手洗いの習慣もあまりありません。家畜の世話や排泄後にそのまま食べたり調理することが一般的です。
お腹が緩いとせっかく摂った栄養がそのまま出て行ってしまいます。各家庭で水を使える状態にしていく必要があります。
ローレル指数
3年間の事業で子どもたちの身体測定をしてきました。事業開始時に”やせ”の状態だった子がほとんどですが、事業終了時点でも”やせ”から”標準”になりませんでした。小学校で月に一度栄養バランスの取れた昼食を提供しましたが、明らかに頻度が少ないです。自宅でも栄養を考えた献立が調理できるよう各家庭に水を届ける必要があります。
これらは、味の素ファンデーション様の資金援助があって事業を行ったからわかった課題です。どの課題も水を必要とします。今後この課題をどうやって解決していくべきか検討していきたいと思っています。
- まとめ
- 事業開始前に立てた目標は次の通りです。
事業目標:
ライパンダック小学校の児童たちは、医師の診察の下栄養のある食事を摂取することにより、通学する体力や授業への集中力が改善され学習の質が向上する。
2024年3月の事業終了時点の結果は次の通りです。
結果:
1.登校する児童:99%
2.遅刻しない児童:100%
3.農業と栄養の知識:90%
4.ローレル指数、改善は見られていない。
この結果から次のように結論付けます。
学校での取り組みとしては目標を達成したと言える。
今後は水へのアクセスを確保し、各家庭での栄養に対する行動変容と意識変容を目指す。
当事業がうまくいった背景には、あらゆる側面からの協力があり、その関係が良好だったことがあります。
日本
•小児科医と管理栄養士に子どもの成長や栄養に関するアドバイスを得ながら事業を進めることができ、調査で集まったデータを分析し考察してもらうことができました。
•味の素ファンデーションの皆さまには他団体につないでいただき事業の参考にすることができましたし、何かあるとすぐに相談に乗っていただけました。
スンバ島
•拠点のライパンダック村の村長さんやライパンダック小学校の校長先生が住民からとても尊敬され慕われる存在でした。
•村と小学校からのサポートがあったので、村人の理解を得やすく協力的でした。
この栄養改善事業にはとてもたくさんの皆さまが関わってくださいました。
厚く御礼申し上げますとともに、これからもスンバ島支援へのご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
- 事業地からの声
- 当事業に関わった現地の方々からのメッセージをご紹介します。
ライパンダック村の村長さん ゲラルド氏
私たちライパンダック村の住人はLIFEの支援でいろいろなことができるようになりました。有機農業、果樹の栽培、家畜のフンを活用したバイオガス発生装置の建設、魚の養殖の仕方・・・事業を行う過程で私たちは自ら考え、話し合い、工夫をし、これらの技能を身につけることができました。
ライパンダック小学校の校長先生 カイタ先生
町から遠く離れたライパンダック村には何も産業がなく大人になっても仕事に就けません。お金を得るには、海で釣ってきた魚や村に自生する木からとった実を売るしかなく、村人全員が貧困に苦しんでいます。
そのような時に日本からの支援で村人たちが野菜をつくれるようになりました。この支援では大人だけが対象になるのではなく、私が校長を務めるライパンダック小学校の児童にも野菜づくりを学ぶ機会が用意されていました。これでこの子たちが大人になったときに野菜づくり農家として生きていけるかと思うと校長として本当に安堵しています。
ウリムくん(小学4年生)のお母さん
うちの息子は好き嫌いがなく私が作ったものは何でも食べます。だけどものすごく痩せてるんです。
日本から来たお医者にうんちがゆるいとせっかく食べても栄養が出ていってしまうという話を聞きました。また、そのお医者さんからうちの子が虫歯がいっぱいあることも聞きました。虫歯がひどくなると歯が痛くてたべられなくなってしまうこともあるそうです。そうならないように歯磨きをして虫歯にならないようにしなければと思いました。
タムちゃん(小学5年生)のお父さん
うちは貧しくて朝ご飯を用意することはできません。娘には、毎朝学校へ行く前に、村の共同井戸へ行って水を汲んでくるお手伝いをさせています。重い水を持って疲れて帰ってきても、何も食べさせてあげるものがないのです。
でも、日本のLIFEの支援でパパイヤの苗木をいただきました。庭に植えたパパイヤに今ではたくさん実がなっています。朝ご飯に何も食べるものがなかったら、このパパイヤだけでも食べてみてねとLIFEから言われました。それならできそうです。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
これからもLIFEへのご支援をよろしくお願い申し上げます。