このコラムでは人物と著書の紹介をしたい。人物は石井一也氏である。彼は当会の元会員でもある。1997年8月にインドで実施した第1回スタディツアーに飛び入りで参加した青年であった。ガンディーの研究のためにインドに来たと記憶している。著書は『身の丈の経済論~ガンディー思想とその系譜』<法政大学出版局>で、25年間にわたってガンディー思想を研究してきて、この3月に出版されたものである。著書に書かれているように近代化に逆行するかにみえるガンディーの生き方、運動はグローバル経済で疲弊していく社会への警鐘といえる。ガンディーについて「インド独立の父」「チャルカー(手紡ぎ車)運動」という言葉くらいしか知らない私にとってインドを訪問するたびに、とくにタミルナドゥ州にあるガンディグラム大学で思想を受け継いでおこなわれている活動や研究には共感する。農村部の適正技術を用いてのエネルギー研究は古臭いと見学する日本人からは感想が漏れてしまう。石井一也氏は現在、香川大学法学部で平和学などを指導しているが、学生に接する眼差しには、まさにガンディーが貫いた平和をつくりだす生き様を感じた。